2次遅れ系の標準形の共振周波数

2次遅れ系の標準形
[latex]\displaystyle\frac{\omega_n^2}{s^2+2\zeta\omega_ns+\omega_n^2}[/latex]

の共振周波数は,バネ・マス・ダッシュポットで構成される機械系の2次遅れ系の共振周波数と同様に求めることができます.LCR直列共振回路では,伝達関数の分子に[latex]s[/latex]がありますが,機械系には[latex]s[/latex]がなく分子は定数です.

形式的に[latex]s=j\omega[/latex]として
[latex]\displaystyle g(\omega)=\left|\frac{\omega_n^2}{\omega_n^2-\omega^2+j2\zeta\omega_n\omega}\right|[/latex]

になります.
[latex]\displaystyle\frac{dg(\omega)}{d\omega}=0[/latex]

を解くと
[latex]\displaystyle\omega_r=\omega_n\sqrt{1-2\zeta^2}[/latex]

になります.

電気系の共振周波数

図のLCR直列共振回路では,電圧[latex]v(t)[/latex]を加えるときに流れる電流[latex]i(t)[/latex]は,
[latex]\displaystyle L\frac{i(t)}{dt}+Ri(t)+\frac{1}{C}\int i(t)dt=v(t)[/latex]

です.ラプラス変換して伝達関数[latex]G(s)=I(s)/V(s)[/latex]を求めると
[latex]\displaystyle G(s)=\frac{s}{Ls^2+Rs+1/C}[/latex]

になります.

lcr

形式的に[latex]s=j\omega[/latex]とおき,[latex]|G(j\omega)|=g(\omega)[/latex]とおくと
[latex]\displaystyle g(\omega)=\omega\left(\left(\frac{1}{c}-\omega^2L\right)^2+\omega^2R^2\right)^{-1/2}[/latex]

になります.

[latex]\displaystyle\frac{dg(\omega)}{d\omega}=0[/latex]として,極大値を求めると
[latex]\displaystyle\omega_r=\frac{1}{\sqrt{LC}}[/latex]になります(共振周波数は[latex]\displaystyle f_r=\frac{1}{2\pi\sqrt{LC}}[/latex]).つまり,抵抗に依存しません.

計算で求めると煩雑ですが,LCR直列共振回路では複素平面でインピーダンスを表せば,Lのインピーダンス[latex]j\omega L[/latex]とCのインピーダンス[latex]\displaystyle\frac{1}{j\omega C}[/latex]の大きさが等しいときが共振の条件ですから容易に共振周波数を求められます.

一方,電圧源を短絡して電流の初期値のみを与えるとき,不足減衰であればその振動の角周波数は伝達関数の極の虚部から
[latex]\displaystyle\sqrt{\frac{1}{LC}-\frac{R^2}{4L^2}}[/latex]

になります.

電気系では,「駆動力」である電圧と,「流れ」である電流に興味があります.力学系では「流れ」である速度ではなくその積分である変位で共振周波数を求めていることに注意が必要です.

機械系の共振周波数

外部から力を加えて強制的に振動させると,外部から加える力の周波数が共振周波数のときに振幅が最大になります.

mechanical

バネ・マス・ダッシュポットで構成される機械系の2次遅れ系に外力[latex]f(t)[/latex]を加えるときの変位[latex]x(t)[/latex]に関する微分方程式は
[latex]\displaystyle m\frac{d^2x}{dt^2}+d\frac{dx}{dt}+kx=f(t)[/latex]

になります.

ラプラス変換して伝達関数[latex]G(s)=X(s)/F(s)[/latex]を求めると
[latex]\displaystyle \frac{1}{ms^2+ds+k}[/latex]

になります.共振周波数はゲインが最大になる周波数ですから,形式的に[latex]s=j\omega[/latex]として,
[latex]\displaystyle |G(j\omega)|=\left|\frac{1}{-m\omega^2+j\omega ds + k}\right|[/latex]

になります.これを[latex]g(\omega)[/latex]とおくと
[latex]g(\omega)=((k-m\omega^2)^2+d^2\omega^2)^{-1/2}[/latex]

になります.

これが極大になる点を探せばよいので
[latex]\displaystyle\frac{dg(\omega)}{d\omega}=-\frac{1}{2}((k-m\omega^2)^2+d^2\omega^2)^{-3/2}(2(k-m\omega^2)(-2m\omega)+2d^2\omega)=0[/latex]

となり,これを解くと
[latex]\displaystyle\omega_r=\sqrt{\frac{k}{m}-\frac{d^2}{2m^2}}[/latex]

になります(共振周波数[latex]f_r=\omega_r/2\pi[/latex]).

一方,零ではない初期値のみを与えて外力を加えない場合,不足減衰のときの振動の周波数(減衰固有周波数)は,伝達関数の極の虚部から
[latex]\displaystyle\frac{1}{2\pi}\sqrt{\frac{k}{m}-\frac{d^2}{4m^2}}[/latex]

になります.

機械系では,「駆動力」は外部から加えられる力で,「流れ」に対応するものは速度になります.しかし,興味があるのは変位ですから,「流れ」に対応する物理量を時間に関して積分した物理量になります.

非減衰固有周波数と減衰固有周波数

2次遅れ系の伝達関数の標準形は
[latex]\displaystyle\frac{\omega_n^2}{s^2+2\zeta\omega_n+\omega_n^2}[/latex]

です.とくに断ることなく固有周波数というときには[latex]\omega_n/2\pi[/latex]のことを指します.減衰比[latex]\zeta[/latex]が零のときの固有周波数を明示的に区別して呼ぶときには,非減衰固有周波数あるいは不減衰固有周波数と呼びます.英語ではundamped natural frequecyです.また[latex]\zeta[/latex]が零ではないときの自由振動の周波数は,減衰固有周波数と呼ばれます.減衰固有周波数は,伝達関数の極から[latex]\displaystyle\frac{\omega_n\sqrt{1-\zeta^2}}{2\pi}[/latex]になります.