第1人称代名詞

某学会では,第1人称の「I」と「We」を使わないとしているようです。使用する頻度が高くないことは事実でしょうが,第1人称代名詞の使用の可否についての意見は一律ではないそうです[1]。

■回避すべき使用方法[1]

  • 自信がないときの「I think〜」や「I believe〜」
  • 物語のように説明する
  • 読者が繰り返す必要がある行為を表す動詞(measure, calculateなど)の文

■適切な使用方法[1]

  • 強い表現を弱くするとき
  • 筆者に固有の行為を示す動詞(show, agreeなど)の文

[1] Kate L. Turabian著, 沼口隆,沼口好雄 訳,シカゴ・スタイル 研究論文執筆マニュアル,慶應義塾大学出版会(2012),pp. 166–168

単位の前後の空白

SIでは単位の前に空白を入れることになっています(°,′,″は後).一方,The Chicago Manual of Styleでは基本的には単位の前に空白を入れますが,例外として%,°C,°,′,″には空白を入れないことになっています.The Chicago Manual of Styleの例は9.16に,SIの表記については10.61に記載されています.

SI
10 %,25 °C,30° 25′ 43″
Chicago
10%,25°C,30°25′43″

New Oxford Style Manualでも単位の前に空白をいれますが,°C,°,′,″には空白を入れないことになっています.%については記述されてないようです.また例外として,コンピュータ関連では3.00GHzや1MBのように空白が用いられないと記載されています.

和文の組版では,数字と単位の間には四部あきを入れます.時分秒はベタで組みます.

[1] The University of Chicago, The Chicago Manual of Style 16ed., The University of Chicago Press, Chicago and London (2010)
[2] Oxford University Press, New Oxford Style Manual, Oxford University Press, Oxford (2003)

_MG_3606

要旨

要旨には2つのスタイルがあります.一つは,問題を手短に述べて研究方法・結果・結論を記述するものです.報知的[1]あるいは情報型[2]と呼ばれるスタイルです.もう一つは,取り扱うテーマについて述べて結果を述べないものです.指示的[1]あるいは暗示型[2]と呼ばれるスタイルです.一つの論文誌の中でもシミュレーションの研究は指示的(暗示型)で,実験の研究は報知的(情報型)で書かれていることが多いように感じられます.

時制については,現在・過去・現在完了が一意的には定まっていない[1],論文でなされている動作については現在形にする[1],すでに終わった仕事を記述する意味合いで過去時制でかかれるべき[2],結論の部分をのぞいて過去形で書く[3],理論の論文では現在形だけですむこともある[1], 実験の論文では be appleid, be studied, be measured は現在完了形が多い[1],アブストラクトは自身の現在の研究結果を述べているので大抵の場合は過去時制にするべき[2]など様々です.

指示的(暗示型)であれば現在形が適切であると思います.一方,報知的(情報型)でかつ実験の研究あれば,目的と結論には現在形を,方法と結果には過去形を用いることが適切なように思います.しかし,出版社系のジャーナルに投稿する原稿を,ジャーナル名を記して英文校正会社に出したら,目的も過去形に修正されたことがあります.

[1] 平野進 編著:技術英文のすべて 第6版,丸善, 1983
[2] R. A. デイ,B. ガステル 著,美宅成樹 訳:世界に通じる科学英語論文の書き方,丸善, 2010
[3] 小野義正:ポイントで学ぶ科学英語論文の書き方,丸善, 2007

download

句読点

理工学系の学術雑誌や専門書では,句読点に「,.」を使うことが多いと思います.当研究室でも「,.」を標準的に使っています.手元の学会誌では,日本生体医工学会,電子情報通信学会,計測自動制御学会,バイオメカニズム学会,応用物理学会,機械学会が「,.」です.

文化庁のweb pageには,参考資料として「くぎり符号の使ひ方」(PDF)があります.8ページに,横書きでは「,。」で示されています.例えば,高校迄の教科書では,「,。」が使われています.理工学部の入試問題も「,。」です.ただし,「くぎり符号の使ひ方」では「普通には,ピリオドの代わりにマルをうつ」なので,ピリオドが使えないわけではありません.手元の学会誌では電気学会が「,。」です.

1959年に自治省が「左横書き文書の作成要領」で「、。」としたことがあるらしく,それは「くぎり符号の使ひ方」と矛盾します.

JIS Z 8301(規格票の様式及び作成方法)では,区切り符号として,「。」,「,」,「・」,「:」を使うことが記されています.

2010年に内閣訓令第1号「公文書における漢字使用等について」が発令され,「3 その他」では,昭和56年10月1日付け内閣閣第138号内閣官房長官通知別紙の同日付け事務次官等会議申合せに記載されていた「1及び2以外の事項は,「公用文作成の要領」(「公用文改善の趣旨徹底について」昭和27年内閣閣甲第26号依命通知)による。」が削除されています.しかし,「公文書における漢字使用等について」では「,。」が使われています.

個人的には,理工系の文章では和文と欧文が混在することが多いので,「,、」や「.。」の使い分けに悩むことがなく,両方が混在する見栄えの悪さを避けることができることから「,.」を使います.PCで文書を作成する場合には,input methodの句読点の設定を変更しなければ「、。」が標準値ですから,横書きでも世の中に「、。」があふれているのは無理からぬことかと思います.