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機械系の共振周波数

外部から力を加えて強制的に振動させると,外部から加える力の周波数が共振周波数のときに振幅が最大になります.

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バネ・マス・ダッシュポットで構成される機械系の2次遅れ系に外力[latex]f(t)[/latex]を加えるときの変位[latex]x(t)[/latex]に関する微分方程式は
[latex]\displaystyle m\frac{d^2x}{dt^2}+d\frac{dx}{dt}+kx=f(t)[/latex]

になります.

ラプラス変換して伝達関数[latex]G(s)=X(s)/F(s)[/latex]を求めると
[latex]\displaystyle \frac{1}{ms^2+ds+k}[/latex]

になります.共振周波数はゲインが最大になる周波数ですから,形式的に[latex]s=j\omega[/latex]として,
[latex]\displaystyle |G(j\omega)|=\left|\frac{1}{-m\omega^2+j\omega ds + k}\right|[/latex]

になります.これを[latex]g(\omega)[/latex]とおくと
[latex]g(\omega)=((k-m\omega^2)^2+d^2\omega^2)^{-1/2}[/latex]

になります.

これが極大になる点を探せばよいので
[latex]\displaystyle\frac{dg(\omega)}{d\omega}=-\frac{1}{2}((k-m\omega^2)^2+d^2\omega^2)^{-3/2}(2(k-m\omega^2)(-2m\omega)+2d^2\omega)=0[/latex]

となり,これを解くと
[latex]\displaystyle\omega_r=\sqrt{\frac{k}{m}-\frac{d^2}{2m^2}}[/latex]

になります(共振周波数[latex]f_r=\omega_r/2\pi[/latex]).

一方,零ではない初期値のみを与えて外力を加えない場合,不足減衰のときの振動の周波数(減衰固有周波数)は,伝達関数の極の虚部から
[latex]\displaystyle\frac{1}{2\pi}\sqrt{\frac{k}{m}-\frac{d^2}{4m^2}}[/latex]

になります.

機械系では,「駆動力」は外部から加えられる力で,「流れ」に対応するものは速度になります.しかし,興味があるのは変位ですから,「流れ」に対応する物理量を時間に関して積分した物理量になります.

非減衰固有周波数と減衰固有周波数

2次遅れ系の伝達関数の標準形は
[latex]\displaystyle\frac{\omega_n^2}{s^2+2\zeta\omega_n+\omega_n^2}[/latex]

です.とくに断ることなく固有周波数というときには[latex]\omega_n/2\pi[/latex]のことを指します.減衰比[latex]\zeta[/latex]が零のときの固有周波数を明示的に区別して呼ぶときには,非減衰固有周波数あるいは不減衰固有周波数と呼びます.英語ではundamped natural frequecyです.また[latex]\zeta[/latex]が零ではないときの自由振動の周波数は,減衰固有周波数と呼ばれます.減衰固有周波数は,伝達関数の極から[latex]\displaystyle\frac{\omega_n\sqrt{1-\zeta^2}}{2\pi}[/latex]になります.

昨日,1月14日,6年ぶりの大雪に見舞われました.15日の朝,キャンパスには雪が残っていました.歩行者の通路を確保するために朝から職員さんが除雪されていました.

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講義開始

この年末年始は曜日配置や工事の関係からか,12/28-1/6が休みでした.今日から講義開始です.クォータ制を導入していると,期末試験の問題提出の期限の時点では,偶数クォータの講義では全講義回数の半分強が終わった程度ですから,試験問題を作り難いです.講義計画どおりに進んだとしても,講義する前に作るのと講義した後に作るのでは,細かな点に差がでるように思います.それよりも,突発的な理由で計画通りに進まなかったときが怖いです.

単極性矩形波の周波数帯域

我々の研究室では,電気刺激にパルス幅0.5 msの単極性矩形波を用いています.これの周波数帯域は次のように計算できます.

パルス幅が[latex]T[/latex]で振幅が[latex]1/T[/latex]の矩形波[latex]y(t)[/latex]のラプラス変換[latex]Y(s)[/latex]は,
[latex]\frac{1}{T}\left(\frac{1}{s}-\frac{e^{-Ts}}{s}\right)[/latex]
になります.

形式的に[latex]s=j\omega[/latex]を代入して絶対値を求めると,
[latex]|Y(j\omega)|=|\frac{\sin^2(T\omega/2)}{T\omega/2}|[/latex]
になります.つまりsinc関数の絶対値です.

この関数は[latex]T[/latex]が0.5 msのときに,

Graph1

になります.-3 dBの帯域で886 Hz位になります.

筋音の周波数帯域は,加速度では100 Hz以下(変位ではさらに低い)ですから,0.5 msの単極性矩形波は十分フラットな周波数特性を有しています(100 Hzのゲインは0.996).

工学的な説明は上記のとおりですが,電気生理学的には活動電位を1つ発生させればよく,活動電位の持続時間は数ミリ秒ですから,上記より帯域は狭くなるでしょうが,機械的性質を計測する上では問題にはならないと考えられます.活動電位で筋のモデルの力発生要素([latex]f_1(t)[/latex])がインパルス的に収縮力を発揮することを仮定しています.

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第33回バイオメカニズム学術講演会

東北大学で開催されました.当研究室からは,

  • 田村:筋音図のシステム同定による小指外転筋収縮モデルの検討
  • 酒井:システム同定法を用いた短母指外転筋誘発収縮モデルの検討
  • 赤澤:ワイヤレスモーションセンサを用いた剣道竹刀の素振り評価システムの開発

の3件を発表しました.

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学科分け説明会

今日は学科分け説明会でした.私は学部の仕事として学門3の共通説明を行い,学科の研究室見学ツアーで写真撮影をしていました.当研究室は医療物理の見学コースでした.見学者の筋電図と筋音図を計測するデモンストレーションです.筋電図は全波整流してその振幅の10秒間の最大値を求めるものです.筋音図はフーリエ変換してそのスペクトルの低周波成分と高周波成分の比から,大雑把に遅筋と速筋のどちらが優位に働いているかを示すものです(厳密性には欠けます).

12月になってようやく日吉の銀杏も綺麗に黄葉しました

生体医工学

有岡が執筆した論文の生体医工学への掲載が決定しました.

有岡,内山:「機械刺激による筋・皮下組織・皮膚の力学特性の解析」,生体医工学,Vol. 50, No. 6, 印刷中

当研究室では,電気刺激を入力すると筋音図を出力するシステムを同定し,その力学モデルを提案してきました.このモデルは,バネ・マス・ダッシュポットで構成される2次系を3つ接続したものです.それぞれ,筋の収縮方向の特性,筋および皮下組織(皮膚)の筋の収縮方向に直交する方向の特性であると考えていますが,3つの伝達関数がそれぞれどれに対応するものであるかは未解決でした.そこで,機械振動を外部から与えて,機械インピーダンスおよび振動伝達率から固有周波数を推定し,筋と皮下組織の伝達関数の分離を試みました.

クォータ制

クォータ制の講義(バイオシステム)を初めて担当します.クォータ制の時間割や実施時に予想されることなどを沢山検討して,ようやく2012年度から物理情報工学科3年生のカリキュラムをクォータ制を導入することができました.試験,病気などによる欠席,補講など,考慮すべきことは多く,また理工学部全体がクォータ制を導入しているわけではないので学生課学事担当の支援をお願することも多々ありました.このような状況ですから科目担当者の負担が増えることは予想されていました.FD委員会が昨年開催しましたFD講演会「有機化学におけるクォータ制について」でクォータ制を部分的に導入している大阪大学の例を伺い,質疑応答の機会をもつことができたことは大変有意義でした.

時間割の編成は,実験と総合教育科目で学科の専門科目を配置できない曜日・時限を考慮しますから,月曜日と金曜日に集中しやすくなりました.月・金の組み合わせより火・金の組み合わせがよいようには思いますが,火曜日には2時限分しか講義を配置できません.また,火曜日は1, 2年生の実験に学科の教員が多く出講するため,配置できる科目も限られています.様々な障害はありますが,クォータ制を実施することにより,セメスタ制では学期末試験が1時限から5時限まで全てに入って試験を受ける学生がへとへとに疲れるといったことは,試験が第3クォータと第4クォータに分散することで避けられるようになりました.学生にとって勉強しやすく,また教員も学生の到達度を確認しやすくなっているのではないかと思います.

理工学部キャンパスから見えた今日の富士山