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学科分け説明会

今日は学科分け説明会でした.私は学部の仕事として学門3の共通説明を行い,学科の研究室見学ツアーで写真撮影をしていました.当研究室は医療物理の見学コースでした.見学者の筋電図と筋音図を計測するデモンストレーションです.筋電図は全波整流してその振幅の10秒間の最大値を求めるものです.筋音図はフーリエ変換してそのスペクトルの低周波成分と高周波成分の比から,大雑把に遅筋と速筋のどちらが優位に働いているかを示すものです(厳密性には欠けます).

12月になってようやく日吉の銀杏も綺麗に黄葉しました

生体医工学

有岡が執筆した論文の生体医工学への掲載が決定しました.

有岡,内山:「機械刺激による筋・皮下組織・皮膚の力学特性の解析」,生体医工学,Vol. 50, No. 6, 印刷中

当研究室では,電気刺激を入力すると筋音図を出力するシステムを同定し,その力学モデルを提案してきました.このモデルは,バネ・マス・ダッシュポットで構成される2次系を3つ接続したものです.それぞれ,筋の収縮方向の特性,筋および皮下組織(皮膚)の筋の収縮方向に直交する方向の特性であると考えていますが,3つの伝達関数がそれぞれどれに対応するものであるかは未解決でした.そこで,機械振動を外部から与えて,機械インピーダンスおよび振動伝達率から固有周波数を推定し,筋と皮下組織の伝達関数の分離を試みました.

クォータ制

クォータ制の講義(バイオシステム)を初めて担当します.クォータ制の時間割や実施時に予想されることなどを沢山検討して,ようやく2012年度から物理情報工学科3年生のカリキュラムをクォータ制を導入することができました.試験,病気などによる欠席,補講など,考慮すべきことは多く,また理工学部全体がクォータ制を導入しているわけではないので学生課学事担当の支援をお願することも多々ありました.このような状況ですから科目担当者の負担が増えることは予想されていました.FD委員会が昨年開催しましたFD講演会「有機化学におけるクォータ制について」でクォータ制を部分的に導入している大阪大学の例を伺い,質疑応答の機会をもつことができたことは大変有意義でした.

時間割の編成は,実験と総合教育科目で学科の専門科目を配置できない曜日・時限を考慮しますから,月曜日と金曜日に集中しやすくなりました.月・金の組み合わせより火・金の組み合わせがよいようには思いますが,火曜日には2時限分しか講義を配置できません.また,火曜日は1, 2年生の実験に学科の教員が多く出講するため,配置できる科目も限られています.様々な障害はありますが,クォータ制を実施することにより,セメスタ制では学期末試験が1時限から5時限まで全てに入って試験を受ける学生がへとへとに疲れるといったことは,試験が第3クォータと第4クォータに分散することで避けられるようになりました.学生にとって勉強しやすく,また教員も学生の到達度を確認しやすくなっているのではないかと思います.

理工学部キャンパスから見えた今日の富士山

満月

今年は中秋の名月を撮影できませんでした.10月30日も満月なので撮影しました.

Canon 60D, EF 70-200 mm F4L IS, 200 mm, F8, 1/800

加速度の積分

加速度を2回積分すると変位を得ることができます.しかし,加速度センサで計測した加速度を2回積分して変位を得ることは困難です.加速度センサの出力に,わずかでも直流成分や極めて低い周波数のノイズが混じっていると,それらが積分されて計算で得られる変位に大きな影響を及ぼします.生体医工学の分野ではヒトの活動量を計測するために加速度センサを体に装着して2回積分して移動量を求めるための補正方法などが研究されています.加速度を積分して変位を求める研究は,地震の分野で様々な計算方法(フィルタ)が提案されています.

研究室では筋音の計測に,加速度センサ,レーザ変位計およびコンデンサマイクロフォンを使用しています.コンデンサマイクロフォンでは皮膚の変位を計測できることが知られています.レーザ変位計には計測部をヒトに装着しないので体動の影響を受けやすい,コンデンサマイクロフォンには空気室が必要で小さくできない短所があります.加速度センサは小型で皮膚に貼付けることができます.加速度センサで変位を求められれば応用範囲が広がります.

下図のAは,加速度センサで計測した筋音です.0.6 s毎に電気刺激を加えて収縮を誘発し,そのときの筋音を計測しました.このデータに零を適切に付加してフーリエ変換し,[latex]-\omega^2[/latex]で割って逆フーリエ変換して時間領域に戻すと,Bを得ます.直流は取り除いてありますが,とても低い周波数の成分が残っています.これを適切なフィルタで除くと,Cになります.筋音では,変位は刺激後に刺激前の値に戻ります.地震の分野において加速度から変位を求める問題よりはずっと易しい問題です.

振動計測において,一般的に低周波数成分には変位センサが,高周波数成分には加速度センサが適していることが知られています.また,数値積分や数値微分で物理量を変換する場合には,様々なことに注意が必要です.当該物理量を直接計測できるセンサを利用できるのであれば,それを利用する方が数値計算よりよい結果になります.

先日,Medical & Biological Engineering & Computing にacceptされた論文でも,数値微分や数値積分で加速度や変位も求めています.それらは,加速度や変位を直接計測したものと完全に同じにはなりませんでした.

Medical & Biological Engineering & Computing

篠原の修論の内容をまとめた論文,Comparison of displacement and acceleration transducers for the characterization of mechanics of muscle and subcutaneous tissues by system identification of a mechanomyogram が Medical & Biological Engineering & Computing にacceptされました.

筋音の計測に用いられるレーザ変位計と加速度センサについて,筋と皮下組織の力学特性をシステム同定によって調べるときのセンサとしての特性を明らかにした論文です.

オリオン座流星群

10月21日がピークになるようですが,前日に30分位,撮影を試みました.残念ながら,流星そのものは撮影できませんでした.下の写真で中央のやや上に曲線がみえると思います.これは流星痕です.

下の写真は,3秒に1回,露光時間を2秒にして撮影した写真を500枚弱合成したものです.

句読点

理工学系の学術雑誌や専門書では,句読点に「,.」を使うことが多いと思います.当研究室でも「,.」を標準的に使っています.手元の学会誌では,日本生体医工学会,電子情報通信学会,計測自動制御学会,バイオメカニズム学会,応用物理学会,機械学会が「,.」です.

文化庁のweb pageには,参考資料として「くぎり符号の使ひ方」(PDF)があります.8ページに,横書きでは「,。」で示されています.例えば,高校迄の教科書では,「,。」が使われています.理工学部の入試問題も「,。」です.ただし,「くぎり符号の使ひ方」では「普通には,ピリオドの代わりにマルをうつ」なので,ピリオドが使えないわけではありません.手元の学会誌では電気学会が「,。」です.

1959年に自治省が「左横書き文書の作成要領」で「、。」としたことがあるらしく,それは「くぎり符号の使ひ方」と矛盾します.

JIS Z 8301(規格票の様式及び作成方法)では,区切り符号として,「。」,「,」,「・」,「:」を使うことが記されています.

2010年に内閣訓令第1号「公文書における漢字使用等について」が発令され,「3 その他」では,昭和56年10月1日付け内閣閣第138号内閣官房長官通知別紙の同日付け事務次官等会議申合せに記載されていた「1及び2以外の事項は,「公用文作成の要領」(「公用文改善の趣旨徹底について」昭和27年内閣閣甲第26号依命通知)による。」が削除されています.しかし,「公文書における漢字使用等について」では「,。」が使われています.

個人的には,理工系の文章では和文と欧文が混在することが多いので,「,、」や「.。」の使い分けに悩むことがなく,両方が混在する見栄えの悪さを避けることができることから「,.」を使います.PCで文書を作成する場合には,input methodの句読点の設定を変更しなければ「、。」が標準値ですから,横書きでも世の中に「、。」があふれているのは無理からぬことかと思います.