我々の研究室では,電気刺激にパルス幅0.5 msの単極性矩形波を用いています.これの周波数帯域は次のように計算できます.
パルス幅が[latex]T[/latex]で振幅が[latex]1/T[/latex]の矩形波[latex]y(t)[/latex]のラプラス変換[latex]Y(s)[/latex]は,
[latex]\frac{1}{T}\left(\frac{1}{s}-\frac{e^{-Ts}}{s}\right)[/latex]
になります.
形式的に[latex]s=j\omega[/latex]を代入して絶対値を求めると,
[latex]|Y(j\omega)|=|\frac{\sin^2(T\omega/2)}{T\omega/2}|[/latex]
になります.つまりsinc関数の絶対値です.
この関数は[latex]T[/latex]が0.5 msのときに,
になります.-3 dBの帯域で886 Hz位になります.
筋音の周波数帯域は,加速度では100 Hz以下(変位ではさらに低い)ですから,0.5 msの単極性矩形波は十分フラットな周波数特性を有しています(100 Hzのゲインは0.996).
工学的な説明は上記のとおりですが,電気生理学的には活動電位を1つ発生させればよく,活動電位の持続時間は数ミリ秒ですから,上記より帯域は狭くなるでしょうが,機械的性質を計測する上では問題にはならないと考えられます.活動電位で筋のモデルの力発生要素([latex]f_1(t)[/latex])がインパルス的に収縮力を発揮することを仮定しています.