はじめに

当研究室では,生体内で起こっている様々な現象をモデル化し,これまで計測することが難しかった物理量を推定する方法や,制御方法を研究しています.例えば,ヒトが四肢を動かすときには,筋肉が収縮します.このとき,電位や振動を計測することができます.この振動の発生メカニズムをモデル化すると,筋肉のバネの性質を知ることができます.筋肉のバネの性質は,ヒトが機械とは違ってなめらかでやわらかい運動を実現することに役立っているだけではなく,運動エネルギーを弾性エネルギーとして蓄えて,再び運動のエネルギーとして利用して,むだにエネルギーを消費しないことにも役立っています.筋肉のバネの性質をヒトは上手く調節しているはずです.この調節の仕組みを明らかにすることを目指しています.

筋肉の収縮には,細胞レベルでは,アクチンとミオシンが関係し,さらにカルシウムイオンとアデノシン三リン酸が関わっています.アデノシン三リン酸は,細胞の中では解糖系とそれに続くクエン酸回路と電子伝達系で作られます.解糖系には,振動現象があることが知られおり,この現象は数理モデル化されています.同様に,細胞の中では様々な基質と酵素が反応して生成物が作られ,また生成物が分解されています.酵素はタンパク質ですから,遺伝子の情報からmRNAを介してリボソームで合成されます.その酵素の活性は,生成物によって促進されるものも抑制されるものもあります.これはフィードバック制御と考えることができます.細胞内では様々な物質が相互に作用しています.細胞内の化学反応を数理モデルで記述し,自在に生成物を得ることができるように,細胞内の化学反応を制御する方法を確立することを目指しています.

cycleサイクルエルゴメータを漕いでいるときの筋のスティフネスの推定
外側広筋を電気刺激して誘発筋音をコンデンサマイクロフォンで計測する.誘発筋音を抽出してシステム同定を行って筋のスティフネスを推定する.

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トレッドミルを歩行しているときの筋のスティフネスの推定
歩行による加速度を自己回帰モデルで近似してカルマンフィルタを構築する.カルマインフィルタを用いて,誘発筋音を含む加速度信号を平滑化する.誘発筋音は,総腓骨神経を電気刺激して,前脛骨筋に加速度センサを貼付して計測する.平滑化した信号を元の信号から引いて誘発筋音を抽出する.誘発筋音をシステム同定して筋のスティフネスを推定する.